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「帆を上げよ、高く」混声版初演について

法政大学アカデミー アーリーサマーコンサートパンフレットより

私たちは過去から未来へ流れる時間の中を生きています。時々振り返りながらも引き返せぬ道を歩んでいます。かつて若さがひりひりと痛かった大学生たちも、今ではすっかり苦(にが)みと寛容を知る大人になっています。
しかし、私たちは同時に時を越えて生きています。私たちの過ごした時間や気持ちは私たち自身の胸の中や、誰かの記憶の中に刻印されています。私たちは思いを託し、託されながらも生きているのです。

今、私と法政大学アカデミー合唱団(その現役生とOBOG)の皆さんを福永陽一郎先生が結び付けてくれます。福永先生に導かれて若い日々を懸命に生きていた私の「歌や、青春に対する思い」は、信長貴富先生の手によって不滅の音楽として生まれ変わりました。そして男声合唱で初演をした同志社グリークラブの演奏会に偶然足を運ばれていたのが小久保大輔先生なのでした。しかも、20年ぶりに。

このドラマを考えると、私たちは、時間というものが多層的に流れ、命や魂は互いに浸食し溶解しながら見えぬ宇宙を「織りなしている」のだということに気付きます。
青春とは挫折を乗り越えながら生きるかけがえのない時間。そして歌とはそれに対する永遠の励ましでしょう。
幾多の艱難を生きてきた大人と、何かに挑もうとする大学生とが思いを通わせながら、「二十歳の海を越えよ」と高らかに歌っておられることを想像すると胸が震えます。多くの人の記憶に刻まれる素晴らしい演奏になることをお祈りしています。

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