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「雪と花火」

なにわコラリアーズ第13回演奏会より

「なにわコラリアーズ」が世界の珍しい曲の紹介に紛れて密かに進めていた? <多田武彦+白秋シリーズ>は「三崎のうた」(CD販売中)から「東京景物詩」 を経て、京都での演奏会でついに「雪と花火」に戻ってきました。この曲は1957 年に多田武彦氏が「藍色のハーモニー」とその音色を評した同志社グリークラブの ために作曲されています。
柳川より上京した白秋は、モダンな都会を舞台にして情緒的、耽美的傾向の強い作 品を多く手がけていきますが、やがて人妻との道ならぬ恋の錯乱の末、癒しを求 めて三崎へ移っていきます…。ここで歌われているのは白秋が東京でのめり込んで 行く恋愛の色香、それも官能的で艶やかで時に厭世的な匂いも漂う色香です。息を 呑むような色彩感に溢れた言葉や、幾重にも隠喩を含んだ言葉の数々が情緒豊かな メロディとしっとり寄り添っているかのようでもあります。

 片恋…アカシアがたそがれの夕日に照らされて金色に散る。やわらかな君の吐息。
 彼岸花…彼岸花は女性。人妻との恋愛に耽溺していく白秋の心象。
 芥子…芥子の葉は世間の例え。世間との断絶感や自身の孤独感を歌う。
 花火…隅田川、両国橋に掛かる花火と頬に流れる涙。遠ざかり消えていく両者の距離感。

・・・銀と緑に散る孔雀玉、しとしと落ちる涙、・・・終曲の花火は男女の情愛の極みである とともに、まるで手を伸ばしても手に入れられない遠い夢の日の象徴のようです。頬に 伝う涙には辛い恋愛の体温を感じます。白秋の詩歌は綺麗ごとや絵空ごとではなく、生 きていくことの苦悩や哀歓に溢れ、血や涙のような強い叙情が滲んでいるのでしょう。
本日、つたなくも気持ちの入った歌を歌いたいと思っています。

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