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おらしょについて

…千原英喜作曲の「おらしょ」は隠れキリシタンの伝承歌と 中世・ルネサンス期のキリスト教聖歌を素材に、作曲者の自 由なファンタジーによって創り上げられた幻想的バラードで す。作曲家は「400年という遥かなる沈黙の時空を超えて、 キリシタン時代に生きた人々の夢と情熱、そして時代の渦の 中に消えていった人々の悲しみを、大きなスケールで歌い上 げていただきたい」と語りますが、まさしく作曲家とともに遥 かな時空に思いを馳せ、想像力の豊かな音楽物語を演奏する ことが何より大切だと思います。

合唱曲としての側面からは、練習に際してお願いしたいことは ただ一点です。
それは「よく耳を使って、互いの声を聞いて欲しい」というこ とです。
日本の合唱界に、千原作品が登場したことは、合唱界の未来を 切り開く大きな道標になっているように思います。日本の歴史 文化が培ってきた「音素材、リズム素材、旋律素材、諸々の音 楽的素材」を「声を合わせて歌う」という営みのシンプルな構 造の中に再創造しながら、アカデミックに過ぎないポピュラリ ティとオリジナリティを発揮して展開していくという作曲姿勢 にはグローバルな合唱世界の中に開かれたものを感じます。
合唱とは、その一義「声を合わせる」ということですが、松下 耕先生や千原英喜先生のアカペラ曲は、まさにその当たり前の ことに気付かせてくれます。声を張り上げることは男声合唱の 特権とも言えますが、その特権を効果的に使うためには、男声 にしか出来ないもう一つの特権に気付くことです。お互いの声 を聞き、各自の果たすべき役割を理解し、チームとして「ユニ ゾン、5度、オクターブ」のサウンドを決め、倍音で周到にホ ールに音場を作っていくことです。
ぜひ、各自の歌唱スキルやそれぞれの思いを持ち寄った上で、 「チームとしての音色を作り」劇敵な空間を作ってみましょう。 この名曲に対峙した素晴らしい演奏になることを夢見ています。

2011年 じゃむか通信より
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