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演奏の場面で・・・同志社グリークラブ

2010年12月 第106回定期演奏会 

同志社グリークラブ第106回定期演奏会に寄せる

今年の同志社グリークラブは、残念ながら全日本合唱コンクールへの 出場はなりませんでした(関西2位金賞でした)。しかしながら、私と しては、緻密な計画を立ててくれる指揮者の森崎君はじめ4年生の頑 張りはもちろんのこと、厳しい練習に耐えた1年生、積極果敢な2年 生、少ないが堅実な3年生、と、それぞれがしっかりと自分たちの学 年の役割を果たしてチームとして機能した一年だったと思っています。 むしろ最近見たことがないくらい積極的な下級生や、関西大会後に近 年珍しい「悔し涙」を見せた上級生メンバーを見て目標である「本格 的復活」に向けての「手ごたえ」を感じる一年でもありました。同志 社グリークラブの本当の復活は、学生が生き生きと自由奔放に音楽活 動している状態を取り戻すこと…、しっかり学んで音楽の本当の楽し さと豊かさを客席に伝えられる合唱団になることです。大学になって から合唱をやるメンバーが多い同グリのことですので、そのためには 地道な反復練習をしつつ後輩をしっかり育てること、迷うことなく貪 欲に目の前の活動に取り組むことが必要でしょう。今年の同グリの姿 からは明るい未来を展望出来ました。ぜひ、「コンクールでリベンジ」 などという偏狭なレベルに留まることなく、リーダーシップを取り、 他団も巻き込みながら往年の大学男声合唱団の勢いを復活させてほし いものです。

さて、今年は大変ご多忙な中、尊敬する藤井宏樹先生、寺嶋陸也先生 をお迎えすることが出来ました。きっと学生たちは情熱ほとばしる演 奏をしてくれることでしょう。技術顧問としては、「伝統とは常に革 新と試行錯誤の積み重ねであること」を説くアジテータとして、学生 と一緒になって「一生懸命の一年を積み重ねていきたい」と思います。 それこそが新しい同志社グリークラブの歩みになるはずです。

2012年12月 第108回定期演奏会 

演奏会に寄せて

私とともに金賞を目指してチャレンジした全国大会では、残念 ながら銀賞にとどまった今年の同志社グリーラブでしたが、嬉 しいことに定期演奏会では京都コンサートホールの大舞台に戻 ってきました。そして、もうかれこれ10年以上見たことのな かった50人を超えるメンバーで舞台に立つことが出来ます。 なんと素晴らしいことでしょうか。4学年合わせても20人台 や30人台前半しかいなかった時期に頑張ってくれた先輩たち の努力を含め、今年の4年生をはじめとする現役グリークラブ の一生懸命の頑張りに敬意を表したいと思います。

さて、今年は大変ご多忙な中、私たちの誇る偉大な先輩でも あり、全日本合唱連盟理事長を務めておられる浅井敬壹先生 をお迎えすることが出来ました。きっと学生たちは情熱ほと ばしる演奏をしてくれることでしょう。私のほうは千原英喜 先生の人気作品「雨ニモマケズ」の男声合唱版の初演をさせ ていただくことになっています。四回生から下回生へのメッセ ージともとれるこの作品の練習を通して、グリークラブの連 綿と続く魂のようなものに思いを馳せることが出来ました。 108回を数える定期演奏会ですが、私たちには究極的には 守るべき伝統的スタイルなどないのだと思います。そんなこ とはどうでもよくって、あるとしたら、ひたむきに歌うこと、 しかも熱く熱く熱く歌うことのみなのでしょう。この魂を引 き継いでくれている今年の同志社グリークラブの精一杯の演 奏をお聞きください。

2014年12月 第110回定期演奏会 

演奏会に寄せて

私とともに全国大会を目指してチャレンジした合唱コンクールでしたが、 残念ながら関西大会では関西学院に及びませんでした。音楽が勝ち負け ではないということは自明のことではありますが、人生を左右するので ないけど懸命に頑張りたい運動会と同様、現在の同志社グリークラブに とっては、技術を上げるため、力を付けるため、明瞭な結果の出るコン クールは良い試練とチャレンジの場にもなっております。悔しさを胸に さらに立派に育ってくれることでしょう。何しろ私の目標は合唱コンク ールなどより遥か遥か向こうですから、小さな達成感で「自分で自分を 褒める」ようなことなどなく、挫折や悔しさや無念を糧に夢をどんどん 膨らませてほしいと思います。

さて、私自身の現在の音楽活動は全て同志社グリークラブの存在によって 発芽し、開かれてきたものです。私がそこで出会った先生や先輩や後輩た ちとの活動を一生の財産にしている以上、私の使命はこの同志社グリーク ラブが生命を輝かせながら歌声を響かせるのを見守り続けることでしょう。 長い歴史があるからと言って、守るものなど何もありません、その時々の 現役生がひたむきに歌うことの連続が振り返れば歴史になるだけです。熱 く熱く歌うこと、それだけを目標に、精一杯導いていきたいと思っていま す。
私は本当は「技術など知らん、魂で歌い続けろ、同志社グリークラブ!」 とのみ連呼していきたいのです。

2016年12月 第112回定期演奏会 

演奏会に寄せて

全国大会を目指してチャレンジした合唱コンクールでしたが、今年も残念 ながら関西大会で関西学院に遠く及びませんでした。音楽が勝ち負けでは ないということは自明のことであり、私も師匠からは繰り返しそのように 刷り込まれて来ています。しかしながら、一度は10人台で東西四連に臨ん だ同志社グリークラブにとって、現在は技術を上げるため、力を付けるため、 ある種の明瞭な結果の出るコンクールが良い試練とチャレンジの場にもな っております。立派なライバルがいることに感謝しつつ、悔しさを胸にさら にたくましく育ってくれることでしょう。
しかしながら、私の目標は合唱コンクールなどより遥か遥か向こうにあり ます。小さな達成感で「自分で自分を褒める」ようなことなどなく、挫折 や悔しさや無念を糧に夢をどんどん膨らませてほしいと思います。皆さん の歌が、他者の人生に影響を与えるものであり、自身の人生を支えるもの であり、社会を変革するほどの力を持つものであることを私は信じています。
後先考えずに熱く熱く歌うことが「途方もない出会いを求める我ら」の回 り道であるとも信じています。
私の使命はこの同志社グリークラブが生命を輝かせながら歌声を響かせる のを見守り続けることでありたいのです。無理なく出来ることなど何もあ りません。力の限りを尽くし命を燃焼させて、ありったけの声で歌を歌い 続けてください。

2019年2月 第114回定期演奏会 

演奏会に寄せて

私とともに全国大会を目指してチャレンジした合唱コンクールでしたが、残念ながら全国大会の出場は叶いませんでした。音楽が勝ち負けではないということは自明のことではありますが、懸命に頑張りたい運動会と同様、現在の同志社グリークラブにとっては、技術を上げるため、力を付けるため、明瞭な結果の出るコンクールは良い試練とチャレンジの場にもなっております。悔しさを胸にさらに立派に育ってくれることでしょう。決して小さな達成感で「自分で自分を褒める」のではなく、悔しさや無念を糧に夢をどんどん膨らませてほしいと思います。
さて、古代ギリシャ人の言葉を読んだことがあります。次のようなものでした。「人間には3種類ある、1つ目がすでに死んでいるもの、2つ目がただ生きているだけのもの、3つ目が海を渡って旅しようとするもの…。」
先輩たちが委嘱をし、校祖新島がイメージされた『帆を上げよ高く』を歌われる皆さんにぴったりの言葉だと思いました。長い歴史があるからと言って、守るものなど何もありません。その時々の現役生がひたむきに歌うことの連続が振り返れば歴史になるだけです。
「同志社グリーのメンバーよ、帆を上げよ高く!」…そう連呼したいと思っています。

2020年2月 第115回定期演奏会 

演奏会に寄せて

1年間を振り返ってみると、グリークラブにとって盛りだくさんの出来事があった年かと思います。良いことも悔しいこともたくさん思い出されますので、総じて充実した一年となったと言えるのではないかと思います。でも、一生懸命の取り組の中で起こったことは全てクラブの歴史となり、メンバーの経験や心の財産になっているのでしょう。京都で開催された全国大会では、プレッシャーのかかる中で見事に出場を果たし、立派な演奏をしてくれました。金賞への思いは後輩に引き継がれたと思いますが、なかなか叶わぬ目標があり続けることは頑張る原動力にもなるものです。
さて、今日はOBとの合同ステージも含め、大きな晴れ舞台となります。同志社グリークラブの伝統とは決してベルトコンベヤーのように当たり前に受け継がれていくものではありません。特にこの20年間のクラブの状況を間近で見ているものとしては、一年一年の学生たちの必死の努力と懸命の工夫によって繋がれていくことを実感します。多くの人に応援してもらえる多彩なステージを現在持っている精一杯の力で表現して欲しいと思います

2021年1月 第116回定期演奏会 

同志社グリークラブ定期演奏会に寄せる

今年は100年を超える同志社グリークラブの歴史の中でも未曽有の危機となる一年であったように思います。東西四連もジョイントコンサートも演奏旅行も合宿も、再興を期した関西六連(五連で再開予定であった)も、全て叶わなくなりました。チャレンジする機会を奪われるだけでなく、様々な制約の中で、日々の練習すら満足に出来ず、合唱そのものを取り巻く無理解とも戦いながら必死に活動自体を守ろうとしてくれた執行学年のことを思うと、自分のことのように悔しくてなりません。
しかし、OB会はじめ、逆に様々な方の助力に支えられながら、本日、考えられる感染対策を万全に施し、各種のガイドラインを遵守した形での演奏会の開催が出来たことに感謝をいたしております。4回生も、このコロナ禍の中で入ってくれた1回生を含めた下回生に将来を託しながら、力いっぱい熱唱してくれるでしょう。
当たり前のような日常の価値を今ほど実感出来る時期はありません。本日はオンラインも含めた開催となり、新たな可能性を展望する機会にはなりますが、音楽も演劇も、そして生活そのものも、生身と生身との対面でしか伝わらないものがたくさんあることも事実です。再び、手を繋ぎ、肩を抱き合い、声を張り上げ、コロナによってもたらされた「分断」から「連帯」を取り戻さねばなりません。その連帯の象徴が「熱い合唱」であることを信じています

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