遠き海の岩礁に腰掛け
空を見上げし
竪琴弾き
黄金の月浴び
星の屑子を纏え
波音聞きて
瞳伏せし
竪琴弾きの
ポロンポロンと
立てたる音に
アルモナドの魚
物言わず
跳ねたり
貝のざわめき
真珠の呟き
裸の肩の輝き
竪琴弾きの
尖りし口元
懐かしきミウゼ蘇り
ポロンポロンと
流したる涙ぞ波間に紛う
哀れ竪琴弾き
神話の夜に幻の如く蘇り
長き叙事詩の一節語り
遥か海の遠鳴りに眠る
竪琴弾きの姿
いつしか消えゆき
海は凪
聞こえるのは海の歌
魚を眠らす波の子守唄
ルラライ
ルラライ
そは竪琴弾きの残しし哀しき歌物語なり
おお、
うみ そら
波よ 風よ
億万年の宇宙の眠りよ
波で洗われた小さな珠よ
飛び交う軽(かろ)きしずくをみよ
時を超える流線型の夢を
人は生まれる前はどこにいたの?
うみのそこよ
泳いでいたの?
さがしていたの
何を?
言葉を
歌を
誰かが落とした竪琴を
歌え
アポロンよ
思い出の海に歌え
飛び交う魚を従わせ
歌え
人よ
憧れの空を見上げ
覚えたての言葉をもちて
そして
聞け
海に落ちた
竪琴の音色を
気づいてほしい
音楽はあなたからあなたの大切な誰かへと奏でられるものなのだということに
私たちが一人ではないことを確認するために…
想像してほしい
世界が音楽に満ちた日のことを
世界はときめきに溢れ人は人のために歌を歌っていることを
そして、あなたのうたを待っている人がいることを
覚えている
遠い昔
一人で海の底に居たころ
波の音
風の音
誰かの奏でた竪琴の音色
夢にみる
遠い海
遠い空
私たちの胸の奥にある遥かな時間の果て
あなたの声が聞こえる
あなたの歌が聞こえる
私に呼びかける声
私に語りかける歌
私の胸の中にはいま、あなたの歌がこだましているのだ
永遠の夜明けのように
海の男は歌が好き
いつも海辺で歌ったもんだ
可愛いあの子は花売りさ
帰ってくるぜと言い残し
船に乗って行ったのさ
もちろん男はそれっきり
あいつの歌が聞こえてくるぜ
月夜の海には
心震わす古い歌だぜ
人よ
語るな
水面(みなも)に歌え
ときを越えて波になるまで
人よ
叫ぶな
風に歌え
ときを越えて宇宙になるまで
耳をすませ
その竪琴に手を添えよ
心を寄せよ
俯いて
瞳を閉じよ
思い出すがいい
探していたものを
思い出すがいい
ただひたすらに
お前のうたを
ねえ
海と空の間にいるのは何?
人よ、
樹のように
過去と未来の間に立っているのは何?
人よ、
樹のように
人はどうしてここにいるの?
歌を歌うため
人は海で生まれ
空を見上げながら歌っている
ほら
聞こえてくるでしょう
歌声が
音楽が
海と空の音楽が
思い出と憧れが
誰かから誰かへの歌声が
躍動する全ての音はいつしか一本の大樹の中に溜め込まれていく
世界の音は大地に根を張り天に向けて葉を茂らせた樹に蓄えられる
そしてその樹から静かに音楽が奏でられるのである
人よ
奥万年の宇宙の長き眠りの中の
儚きその夢のひとときに
言葉の呪いが解けるとき
慈しみの鐘が鳴り
(バベルの)塔は崩れ去る
人よ
失いし竪琴を探し続けよ
歌え
夢みよ
空に憧れ
樹のように枝葉を伸ばし
やがて海に眠れ
人よ
宇宙の眠りに枕せよ
ねえ、それからどうなったの?
何が
人が
人は
音楽と出会って
いつも歌を聴いているの?
人は子守唄を聞いて
みんな眠りましたとさ
みんなみんな
続きは夢の中
夢の中
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