言葉のメモワール
初夏
さくらんぼの実る頃
木の葉から漏れる光は
生まれたばかりのみずみずしさを湛えていた
風はまだ
誰の肌にも触れなかったかのように
はにかんでいた
まだ何も知らなかった頃
花や果実の香りだけで十分だった頃
僕らは裸のまま風に晒されていたのだ
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