言葉のメモワール

戦場


青年は気が狂ったように
叫びながら敵陣に飛び出した
戦場で
二十五発の銃弾が
彼の大きな身体を貫いた

青年は誰も殺したくなかったから
本当は花の絵を描くのが好きだったから
黙って風景を見ているのが好きだったから
一番最初に死んだのだ

死骸は無残だったので
似合いもしないヘルメットだけが国に戻った
耳の遠い母のもとに




2010.12.1
 
作曲:松下 耕  女声合唱組曲「うたおり」 2011

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