言葉のメモワール

天使


別れは突然やってきた
天使は
「さよならさよなら」
と二度囁いて翼を広げた

もう少しいろんなお話ししたかったけど
もう少しいろんな音が聞きたかったけど
もう少しいろんな頬にキスしたかったけど
天国で鐘がなっているから
お別れするね

天使はそういって空の階段を上っていった
時々ふわりと身体を浮かべて
軽々と

階段を踏むごとに音楽がなった

ソドレファ
ミレミドミレ
マリンバのような音だった
楽しい音楽が聞こえてきたのだ

「さよならさよなら」
僕も二度囁いた
目を閉じたまま

僕はまださよならを言うことに慣れてはいなかった
でも泣かなかった
静かに手を振った
すると涙が一筋だけほほを流れた
そう、それが流れ星になるんだった

「さよならさよなら」
僕はまた二度だけ囁いて天使を見送ったのだ


2010.12.1

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