言葉のメモワール


どこかから眺めていたい朝がある

ビルの屋上か
雲の隙間から

人が何かに向かって動く様子を
朝日が溢れ
照らされた部分から胎動が起こるのを
小さな風があり
大きな波があり

やがて血流のように道に流れが出来ていくのを
声が街を取り囲んでいくのを

小学生が列をなして歩き
高校生が服装を乱しながら塀をよじ登るのを
電車が緩やかな一直線で人を運ぶのを

人はどこかに向かっている
迷うことなく向かうべき方向に動いている

それを確認したくなる朝があるのだ



2011.5.16

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