言葉のメモワール

二月


寒い季節に咲く花が
父の好きな花だった

二月は逃げていく
忙(せわ)しげに
訳も告げず

そわそわと
二月は逃げていく
寒さを大義名分のようにして
こちらの顔さえ見ないようにして

僕は鈍痛を抱えたまま
受けた傷の意味を問い詰める間もなく
それを見送るのだ

逃げたければ逃げろ
と呪いの言葉を吐きながら

この寒さを乗り切ったら
この季節さえ我慢すれば

そう呪文のように唱えながら

僕が
梅の香りに気づいたのは最近のことだ



2011.5.16

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