言葉のメモワール
九月
天使は九月が好きだ
九月の雲で
天使は天国に向かう階段を作っている
裸には少し肌寒い透明な午後の空
梨の実を剥いた手で
まだ実り始めた葡萄の房を触った手で
翼を頬にこすり付けたり
息を吹きかけたり
口笛を吹いたり
互いにふざけ合いながら
天使は階段を作っている
日差しが変わり
風が変わり
色が移ろい
季節の匂いが混ざり合う九月の雲を使って
階段を作るのだ
美しい瞬間は
必ず何かと何かの隙間に潜み
何かが何かに移り変わる時間の中に隠されている
天使はそのことを分かっているから
少年のように
繊細な気遣いと悪戯っぽい仕草で
九月の雲の間を行き来しているのだ
2011.5.16
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