名古屋にある合唱団「うぃろう」のために「春の天使(みなづきみのり)」
という素敵な小品を書いていただいたのが森山さんとの出会いでした。その
時初めてお話をさせていただいたのですが、その直後からの僅かな時間の中
で、森山さんに書いてもらうことを想定した連作の詩が溢れるようにして出
来ました。
多層的で明るいもの、知的でユーモラスなもの、爆発的でエネルギーを持って
いるもの、そして夢のように官能的なもの、…身体から湧き出るイメージを言
葉にしたところ、森山さんの多彩で知的な取り組みが、またとない合唱音楽を
この世に誕生させてくださいました。
それから、…ああモーツァルト。
ベートーヴェン好きで、背伸びしてロマンロランを読んでいた中学生の私が
自分で取り付けたFMチューナーから最初に流れて来たのは「まことのおからだ」
というタイトルで紹介されていました。モーツァルトの美しさを認識するとと
もに「まことのおからだ」って名前はなんなんだ?と、素朴な疑問を持ったこ
とを思い出します。森山さんの底知れぬ才能は、忘れていた私自身の記憶まで
私の言葉の水脈の中から見つけ出し、音楽に結び付けてくださったのです。
私たちの身体は音を奏でています。
そこに寄り添い、触れ、耳を澄ましたときのみに聞こえる豊かな音楽を。
愛のある美しい音楽を。
人はその音を聞きたくって人に近寄っていくのです。
「あなたの肩に触ってみたい…」と。
歌になった言葉を聞いて、そう思いました。