夢見る魚のあぶく
by みなづきみのり

夢にこだまする めっせーじ


これは、日頃から敬愛する高嶋みどり先生が、ある「ボスざる」の新聞記事をご覧になられてイメージされた原案に対して、私が想像力を膨らませて「ナレーション」と「詩」と「コロス(ギリシャ劇で言うところの)的な精霊の声」を混ぜながらテキスト化したものです。
私はもちろん「猿の一生」を書いたのではありません。擬人化しており、簡単に言うと、これはボスザルというものに託した「孤独」と「挫折」と「目覚め」と「悟り」の物語と言えるでしょうか。夢見ながら懸命にこの世を生きることと、それに伴う苦悩、(ある種の運命のようにものに対しての反発や、その中で感じる孤独、高邁過ぎる理想ゆえの絶望・・・)、反作用としての愛の希求、そして、悩み抜いた者だけが到達する人生の境地のようなものを描きたかったのだと思います。
主人公は、最初はラスコーリニコフ的とも言うべき孤立感を抱えたまま自問自答を繰り返しますが、やがてもっと大きな宇宙の摂理や、周囲からのサポートを感じ、自分自身が一人で生きているのではなく、生かされている存在であると気づきます。孤独や絶望を避けるのではなく、それらを「乗り越えて自分自身の生きる道を模索し見つけていって欲しい」という思いを込めたつもりです。
初演は、私が合唱劇に取り組んでいた時期にお世話になった演劇人の二口大学さん、広田ゆうみさんにも手伝っていただき、照明や演出を入れて歌い手たちが躍動する衝撃的!なステージになりました。何より高嶋みどり先生の音楽の普遍的な説得力やドラマ性、緊張感が素晴らしく、合唱ミュージカルというのか・・・、新しいジャンルに素敵な曲が誕生したと思っています。
きっと演出家や朗読者に力を奮ってもらうことで、ややもすれば<井の中の蛙>になりがちな合唱団員にとって表現上の大きな気付きを得る機会にもなるでしょう。また、合唱曲としての難易度は少ないですから、例えば高校や大学、地域社会等で合唱部と放送部と演劇部とダンス部!とかが一緒になって発表会を持つというような取り組みがあっても面白いと思います。合唱の固定観念を取り去り、ジャンルや枠組みを超えて、新しい仲間とのチャレンジングな取り組みにも期待したいと思っています。




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