夢見る魚のあぶく
by みなづきみのり

「さびしい魚のはなし」について


私はどうも「さびしい」「さびしくない」という感情の対話を蝶番(ちょうつがい)の ようにしながら、心の底からあぶくとして吐き出されてくる言葉を整列させているよう に思います。それは、人は人を愛し愛される存在であるということと、その愛や生命と いう匿名性の高い世界の総体の中に溶け込むことに抵抗し、小さな自分らしい足跡や痕 跡を残そうと必死であり続けないといけないと思う 気持ちとの、(いわば「愛と孤独の」) 葛藤のあらわれなのかもしれません。メモワールとして貝殻の中に閉じ込めていた詩物語 でしたが、期せずして合唱作品として新たな生命を得ることになりました。土田先生に は、拙作から素晴らしい音像を立ち上げていただき感謝しております。意味ではなくイメ ージの連鎖の中に、愛し愛されつつも一人で生きていくことの痛みと温もりとが紐解かれ、 それが多くの寂しがり屋の心を照らす月灯りともなりますように。




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