「 これは、数々の音楽人を輩出してきた「同志社グリークラブ」の110周年
記念定期演奏会において信長貴富先生に曲にしていただくことを想定して書
き下ろしたもの(詩)です。
大学時代とは、知性と感性と体力が充実した個人が真剣にぶつかり合える
時代であり、ここで「何に出会うか」ということによって人生を覆う価値観
や世界観が形成されてくるのではないでしょうか。大学合唱団の魅力は潜在
的にそのような爆発的とも言える強いエネルギーを抱えていることです。
テキストでは「自由」という言葉の強度に対峙して自らを鼓舞する翼の
イメージ、音楽と人生の奥底から沸き出る苦悩と憧憬の表出、そして旅立
とうとする全ての人への励ましのメッセージを込めてみました。私の稚拙
な言葉は信長先生の手によって新たに崇高な生命を与えられ、私たちにた
くさんの気づきを与えてくれているようにも思います。「音楽」が喜びや
希望を持った力であること、「仲間」が生きている目的を支え、伝えたい
という意志を生み出す力であること・・・、そしてさらに、私たちの「未熟さ、
稚拙さ、無謀さ」が「いつかはこうなりたい」という夢を育む力であるこ
とへの気づきです。
この曲が多くの「若い気持ちを持った男声合唱団」に熱く高らかに歌って
もらえることを願います。
p.s.
「春愁のサーカス」は、すでに20年以上も前に突然の別れとなった師匠へ
の気持ちと私自身の若い日々を何度も書き直しながら言葉にしました。実は、
この曲の初演の日、幼い頃に会ったことのある師匠の御孫さんが、まったく
思いもかけない偶然から客席に足を運んでおられ、涙ながらに私に会いに来
られたのでした。出会いと別れと再会・・・寂しくも月光のような弧高の美意識
と、心の武装を解除し手を取り合う喜びとの繰り返しが世界であり、私たちの
人生なのでしょうか。