アポロンの竪琴

問え、そして歩め


雲に向かって問え
雲は道を示す
海から沸き起こり、空を駆け巡る白雲は
お前のような旅人の遥かな道標となるのだ

鏡に向かって問え
鏡は真実を映す
心の底からこみ上げてくるものがそこにあるか
頬が紅潮していれば黙って頷くがいい

手に向かって問え
手は物語を刻む
ひかりと血流のまだらに
生きていることの逃れられない現実がそこにあるのだから

風に向かって問え
風は音楽を導く
リズムは心臓の鼓動
お前は熱くて優しいメロディーを歌えているか

星に向かって問え
しかし、それは孤独という名の甘い蜜ではない
しがみついてはならない
大切なことは愛を受け止めることなのだから

木に向かって問え
木は時を教える
枝を張り、葉を茂らせ、果実を実らせ、やがて朽ちていく
そこには覚悟があり、黙して泰然と世界との関わりを全うする逞しさがある
そしてそれは
歴史の中で、世界の中で
お前が生きていくことへの最も大きな励ましになるだろう

さあ、歩め
再び歩きだせ



2009.9.22
作曲:北川 昇  混声合唱組曲「まだ見ぬあなたへ」 2010
作曲:北川 昇  男声合唱組曲「まだ見ぬあなたへ」 2013
Copyright©Minazuki.Minori All rights reserved