アポロンの竪琴

やがて音楽が


いつからか街には言葉が溢れていた
言葉は人から離れ喧騒となり、争いが始まった
物陰からは誘いの声が飛び交い、怒号が渦巻く
あらゆる壁面には書きなぐりの文字がぶつかる
言葉は故郷を求めているのに

忘れてはいないだろうか
音楽を聴くことを
アポロンの竪琴を

風にそよぐ木の葉の音
ブランコが軋む音
大地には子供が駆け、空には若い声がこだまする
草が踏まれる音
芽吹く音
花開く音

世界の音は全て命の躍動なのだ

躍動する全ての音はいつしか一本の大樹の中に溜め込まれていく
世界の音は大地に根を張り天に向けて葉を茂らせた樹に蓄えられる
そしてその樹から静かに音楽が奏でられるのである


世界を包む音楽が
人と人とをつなぐ音楽が
言葉を蘇らせ心へ還していく音楽が
やがて音楽が
全てを結びつけるのだ



2009.9.22
作曲:千原英喜 女声合唱とピアノのための組曲「アポロンの竪琴」  2011
作曲:松本 望 混声合唱組曲「やがて音楽が」  2011
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