私は空に手を触れる

失くしたもの


(失 わ れ る…)

夕焼けの空
過ぎていく列車
浜辺に転がるパラソル
ファインダーに傷痕(きずあと)だけを残して

(褪 せ る…消 え て い く…)

私の心が
世界の色が
虹が空に
紫陽花が雨の記憶に

(遠 ざ か っ て い く…)

雲が
存在が
大切なものから順番に
私からあなたが
海の向こうに船が
時が

私たちは何かを失いながら生きている
何かと引き換えに
忘れ
捨て
葬り

それは全てを再び蘇らせるために
私たちが遥かな循環を生きるために予め定められた定理なのだ

夢が
まばたきが
呼吸が
私たちを世界と交わらせる

失った一滴のしずくが旅をし やがて雨になって降り注ぐように

失った風景や時間は
蘇る

いつか
誰かに
歌われることによって



2015.6
作曲:名田綾子 2015
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