私は空に手を触れる

誰も知らない


誰も知らない海がある
誰も知らない夢がある
誰も知らない海岸で
誰も知らない船が旅立つ
僕は水平線を見つめる
僕は不確かな未来のことを思う
誰も知らない人生のことを
誰も知らないこの世界の果てのことを
僕は思う

誰も知らない夜がある
誰も知らない孤独がある
誰も知らない街角で
誰も知らない星が輝く
僕は夜空の底を見上げる
僕は根拠のない悲しみのことを考える
誰も知らないこの痛みのことを
誰も知らないこの世界の傷痕(きずあと)のことを
僕は考える

終わりのない道
生と死の反復
忘れられた憧れと希望
ただひたすらに赤い夕日
閉じた微笑み

僕らはいつも誰も知らない時を生きている
切り取られ、取り残された異次元のような空間を生きている
誰も知らない世界の隅で
僕は一人立っている
涙を流すでもなく、ただ立っている
誰かの手を求めて
伝わる共感を求めて
立っている

誰も知らない風に吹き晒されるままに


2012.12
作曲:瑞慶覧尚子  あなたとわたし 2013
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