私は空に手を触れる

木のざわめきの中で


この木の下で私たちは出会った
春の夕暮れ
風は虹色
タンポポの綿毛を運んでいた

ざわざわざわざわ音がした
何かの予感のように
あなたは私の手を握った
微笑みのような温かさで

この木の下で私たちは語った
雨上がりの午後
光は瑠璃色
野原に露を敷き詰めていた

ざわざわざわざわ音がした
何かのつぶやきのように
私はあなたの胸に凭れていた
木の葉のようにしなやかに

人は木の下で出会う
多くの戸惑いを抱えたまま

人は木の下で大人になっていく
笑いながら
泣きながら
たくさんの約束を交わしながら

私たちは木に見守られ
木に寄り添いながら生きていく

このざわめきを胸に聞きながら
このざわめきに見守られながら




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