やさしさとさびしさの天使

少年の姿をした天使



天使は少年の姿をしている

さびしさとやさしさは蝶番のように
人の気持ちの扉を開け閉めしている
さびしさはやさしさを忘れられず
やさしさはさびしさという陰りからしか生まれない

さびしさの中にやさしさは膏薬のように刷り込まれ
やさしさがあるからやがて寂しさが訪れる
天使はその両方の中に潜んでいるのだ

両方の気持ちを二つの指のように絡ませながら
両方の気持ちを翼のように羽ばたかせながら
二つの気持ちを行き来する


天使は二つのドロップを持っている
さびしさのドロップと
やさしさのドロップ

天使はドロップが好きだ

さびしさには微笑みを
やさしさには涙を
少し混ぜ合わせ

天使はカラフルなドロップを雲の隙間からばら撒いている

線路を走っていく少年に
膝に怪我をしながら夕日を見つめる少年に
布団の中で一筋の涙を流す少年に

やさしさとさびしさは強い抒情のゆらぎになって
やわらかい春の蓮華畑ように
雨上がりの紫陽花の薄い色彩のように
はかない秋の雲のたなびきのように
明るい冬の陽だまりのように
失われていく夏の終わりの光のように

…次第に緩んでいく

ドロップを舐めた少年の僅かな微笑みになって


2010.12.13
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