やさしさとさびしさの天使


母が剥いたりんごの形の美しさ
母はいつもあの日のままの姿だ

母に背負われて降りた電車沿いの坂道
入院したベッドの脇で本を読んでくれた母の声
憂いを見せない母の笑顔

よく母の新しい髪形をからかった
一つ歳をとったことをからかった
編み物が仕上がらないことをからかった

ささいなことで反抗もした
八つ当たりをしたり
全てを母のせいにしたり

照れくさいのでお礼も言わなかった
何でも母に解決してもらったのに

これらは子供っぽい愛情として許されるだろうか

栗が好きだった母
魚をきれいに食べることが出来た母
洗濯物を皺一つなく畳める母
雑巾を固く絞れる母
歯が丈夫だった母
バレエに憧れていた母
少し教師をしていたこともある母

どれも、どのシーンも日めくりのカレンダーのようにして現れる
座布団の上に正座する母
台所に立つ母
布団を干す母
私を庇うために強い語気で人を怒ってくれた母
疲れてうたた寝をする母
字がきれいだった母

感傷的な気分にはなりたくはない
それも照れくさいからなのだろうか

ただ
、 夢のような日は遠く
いつまでもやさしい

縁側に注ぐ2月の陽だまりのように


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