からだのおと


爪を研ぐ
私たちの身体に残る獣を
太古の月の光に向けて
あらゆる裏切りへの報復のために
逆立つ毛のために

爪を立てる
私たちの身体に残る野生
心の底の闇に向けて
復讐の扉を開く合図のために
渦巻く血のために

そのフォルムが
悲しみを滴らせながらあえかに呼吸する

その光沢が
苦しみを引きずりながら押し黙っている

爪を弾くと深夜の森がこだまする
星が震える

爪を噛むと獣たちが目覚める
地表が唸る

私は夜の底にたまった呻き声を聴きながら
濡れた頬を指で触れ
爪の先で夜の雫を拾っている
やがてくる戦いの準備のために




2017.3
作曲:森山至貴 2017
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