私からあなたへの歌

人は誰でも
悲しみ抱えて生きている
それは胸の鼓動（こどう）の奥のほう
繰り返し押し寄せる波のように
心の内側で響き合い
思い出したように私を静かに包んでいく

歌は知っている
私の悲しみもあなたの悲しみも
歌は涙とともに芽生えるのだから

でも
歌は知っている
あなたのそばに誰かがいることを
私が手を伸ばすと誰かの手に触れることを
今日が明日へとつながっている

歌おう
やさしい声で
歌おう
窓に向かって
涙はいつのまにか朝の雫（しずく）に変わるから

人は誰でも
寂しさ堪（こら）えて生きている
それは心の小部屋の隅のほう
あめの日のピアノの音のように
私の心の窓を打ち
思い出したように私を仄かに包んでいく

歌は知っている
私の寂しさもあなたの寂しさも
歌は孤独な唇に宿（やど）るのだから

でも
歌は知っている
あなたのそばに言葉があることを
その言葉は誰かが私に教えてくれたものだということを
未来は今から始まっている

歌おう
静かな声で
歌おう
えくぼ作って
涙はいつのまにか花の蕾に変わるから