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 信州大学のこと

06−02 2006.12.11

私の合唱活動とは、出会いと再会の繰り返しの中で・・・、それらがまるで夢と幻想の区別の ように曖昧に少しずつ変形しながらも響き合い、お互いの中に流れている時間の緩やかさに対 してまなざしを送ることだけで多くのことを納得させてくれるという「世界の仕組み」を教え てくれているように思います。敢えて分りにくい言い方ですが・・・、本当に・・・。

長野から松本に戻る途中の「姥捨」の夜景の美しさ・・・、ステージから戻ってくる信州大学 のメンバーの一人一人の顔・・・、演奏会の打ち上げの行なわれた温泉旅館をタクシーで後に するときに、メンバーが外に出て見送ってくれた光景・・・、この瞬間は夢かもしれない、い やこの瞬間をいつか思い出す・・・、いや、この光景に似た光景をどこかで体験している・・・と いう感情が幸福の温かさとともに私を包んでいました。
そして、しばらく後に、この夢のような気持ちは私自身が「学生指揮者を終えた瞬間」の気 持ちと同じじゃないだろうか・・・!ということに気付いたのです。学生たちのあまりにもひた むきでピュアな取り組みが「このステージに全てを賭ける」といった学生指揮者時代の私の 感性と再会させてくれたとも言えるのでしょうか。

2日間に渡る信州大学混声合唱団の演奏は大変立派でした。もちろん、私が大学生と演奏を するときはどの団体でもいつも真剣で必死ですが、京都から遠く離れた地での「客演」であ ることや、私の高校時代のワンダーフォーゲル部では毎年夏に北アルプスに行っており、6 名の同級生のうち3名が京都から信州大学に進学したとか(あまり関係ないけど)、大学時 代の合唱仲間の同級生が伊那の出身者であって、17年ぶりに私の指揮する演奏を楽しみに 聴きに来てくれるとか・・・、いろんな要素がこの二日間を特別な二日間に彩ってくれたのかも 知れません。

学生は皆真剣で気持ちに満ち溢れていました。演奏結果の良し悪しだけではなく、私を信頼 してくれている学生たちと本当に一体となった音楽を実現することが出来たような気がしま した。そして、そのことこそが私を学生指揮者時代に感じたような初々しい感覚と再会させ てくれたのだと思います。

・・・今年一年間は辛いことのほうが多かったなあ、と思いながら一年を振り返っていた私で したが、こんなに素晴らしい時間を共有出来たことで今年一年が意味のある一年のように思 えてきました。この二日間のことを私は忘れないでしょう。そしてあのようなひたむきな学 生たちと真剣な音楽作りをするという場面に私はまたどこかで再会することになるような予 感がしています。なぜなら私自身の学生時代が、彼ら彼女らと同じ様に真剣で必死で何かを 求めていた学生時代であったからです。陽ちゃん先生は聴いてくれたでしょうか?次元は違 いますが、教えてもらった通りに学生と一緒になって120%の気持ちを込めた音楽をしていき たいと胸に決めています。

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