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 ただたけだけコンサート開催

09−2 2009.4.11

ただたけ 男声合唱出身である私としては、他の多くの男声合唱経験者と同じように 「ただたけ(=多田武彦)ファン」でもあります。学生指揮者時代どうし ても指揮したいと思ったのは「中勘助の詩から」でしたし、自らも何度も 多田作品を歌ってきておりました。また、「なにわコラリアーズ」の創設 に当たっても、混声合唱の男声メンバーが宴会の度に「ただたけ」を歌って いたことが切っ掛けでもありますし、記念すべき第一回目の演奏会は「ア カペラ宗教曲」「ただたけ(草野心平の詩から)」「スピリチュアルズ」 の三本柱でステージを固めたくらいでもあります。その後、「なにわコラ リアーズ」は世界の合唱に目を向け、どちらかというと「新しいレパート リー」を活動の中心に据えて来ましたが、機関紙ハーモニーにも (→「『中勘助の詩から』 多田武彦  〜言葉と永遠のかけら〜 」)当日のパンフレットにも (→「多田 作品とは」)書かせてもらっているように、なにコラ自身も地道に多 田作品に取り組んできており、この演奏会に合わせて念願の「北原白秋の 詩によるCD」(→「北原白秋の詩よる・・」) をリリースすることが出来ました。

全ての文章の重複になりますが、多田作品の素晴らしさは、テキストに内在 する言葉の抑揚、旋律性のようなものを見事に見抜いた選択眼であるとも思 います。ある意味、全く似ても似つかないように見える三善晃や鈴木輝明作 品が谷川俊太郎のテキストから、なるほどこれだったか!という色彩とサウ ンドを抽出しているのと、対極であり同軸でもあるように思います。
定型詩や韻律、詩に内在する様式的美とそこから解放される音楽的自発性の ようなものをどう語るかというのは、取りとめのないテーマで興味深い話題 ではあります。しかしながら、それについては人生を進めながらおいおい言 葉に纏めていくこととしましょう。いずれにしても、多田武彦作品の存在が 結果として日本の男声合唱の隆盛を支えたことは間違いのないことだと思って おり、大学男声合唱団のパワーが弱まっている今こそ、我々が多田武彦を歌 うことで男声合唱の若々しい復権に繋がっていかないか、と密かに期待してい るのです。

この演奏会の開催に当たって多田先生は私に対して大きな信頼を寄せてくだ さいました。「三崎の歌」のCDの頃から、最高級の褒め言葉をいただいて おり、私の感性を非常に高く買ってくださっていました。そのことがこの演 奏会の開催に大きな力と励ましを与えてくれました。幸運にも集客に恵まれ、 折りしも終演時には雨が降り出し、アンコールの雨がぴったりというシチュ エーションも奇跡的で、夢のような企画を成功させることが出来ました。今 後も、勝手な使命感を持って、日本語の言葉の持つ様式の美と、そこからは み出し崩れそうになる情緒との駆け引きとを表現していきたいと思っています。

さて、早々に第2弾を準備しています。第2弾は「中原中也の作品」を中心 に集めた企画で、山口県での開催を決めています(2010年1月30日: アスピラート防府with「とおんきごう」さん)。今年は私の指揮する奈良の おかあさん団体「エントアール」で「白き花鳥図」(女声:ピアノ版)も合 わせて演奏させてもらいましたが、来年は偶然の積み重なりで出会いました 「とおんきごう」さんにお世話になります。ぜひ現地団員(男声)も募集し ますので、当地に近い方で一緒に歌っていただける方(特に若い人をのぞみ ます)は申し出てください。このシリーズは、この後、金沢→信州→北海道→ と、冬の味覚?を求める楽しいシリーズとして続けていきたいと思っています。

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