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 師走の風景〜「京のこよみうた」より

12−17 2013.1.12

そもそも島国である日本はわらべ歌や民謡等、多様性あるフォークロアの 宝庫とも言えるわけですが、かつて都があった京都にはたくさんのわらべ 歌が残っています。数年前に大学生と一緒にそんな「わらべうた」を今の 子供たちに伝えていく取り組みをしておりました。私たちの世代でももう 知らない歌や知らない遊びがたくさんあり、それを年輩の人に教えてもら いながら、大学生とともに小さな子供に伝えるという試みです。
考えてみれば今の時代、子供が外で声を出して駆け回っているという光景 にはめったにお目にかかれません。かつて歌いながら遊んでいたような遊 び歌はもちろん、近所の子供たちを呼ぶのに「○○ちゃん、あーそーぼ」 という声さえ聞かれることがなくなってきました。四人集まっても無言で ゲームをしているなんてことがあるくらいです。大人の社会作りが子供か ら遊び場を奪っていったわけですが、この代償はあまりにも大きいような 気がしています。ましてや唱歌とも異なり、わらべ歌や遊び歌は楽譜に残 されたり、教育の中に取り込まれたりするようなものではないので、近所 のお兄さんお姉さん、オジサンおばさん、といった「地域力」の中で受け 継いでいくことを意識しなければならないと思い知ってスタートさせた取 り組みでした。
「丸竹夷」はご存じでしょうか?
なかでも京都の通り名の歌は、京都のきれいな区画と道を前提とした歌で あるため全国的にも珍しく、方向音痴の私も便利に使っています。(ほろ 酔いで町を歩くときなど特に)
ただ、昔のものばかりを掘り起こすというのはなく、やはり今の時代の中 で今の子供たちに伝えるべきものもあってもよいと思い、数年前に5つの わらべ歌を自分で作詞作曲したのでした。
「京ことばのうた」「京野菜のうた」「地下鉄烏丸線のうた」「ひいふう みいのうた(京の名所めぐり)」そして「京の暦歌」、、実際に作ったの は数年前ですが、今回「合唱団:葡萄の樹」の演奏会に際して、村上果さ んに混声合唱アレンジをしてもらい、歌いました。
わらべ歌には、子供たちに刷り込みたいこと、覚えてもらいたいことが練 りこまれているようなこともありますが、「京の暦歌」では、京都の年中 行事、季節ごとの行事や、風習のようなものを練りこんでみました。1月、 2月、3月、4月…、それぞれの月や季節にふさわしい京都の見どころを 歌いながら覚えてもらうという試みだったのです。
楽しく歌って京都の年中行事を覚える、一石二鳥の曲であると思うのです がね。どうぞ広がっていきますように。


『京の暦歌』(作詞/作曲:伊東恵司)

白味噌雑煮のお正月
  蹴鞠初めは下賀茂さん
天満宮の梅をみて
吉田神社で鬼退治

雛の祭は宝鏡寺
桜の四月は嵐山
夜はしだれの圓山へ
五月は大田の杜若

水無月食べたら梅雨が来て
  梅雨が明けたら祇園さん
夏の夜空は大文字
行燈、提灯、地蔵盆

芋名月の萩の宮
鞍馬の火祭り(ゆき)神社
紅葉の名所は東福寺
嵯峨野、神護寺、南禅寺

師走はかぼちゃに大根(だいこ)炊き
しまい天神おみぬぐい 
南座顔見世にぎやかで
知恩院(ちおいん)さんの除夜の鐘

鐘を聞いたら帰りましょ
火縄回して帰りましょ
一つ二つ
三つ四つ五つ
百八つ
ひとよ明けたらお正月

P.s
小学校時代、近所の了徳寺の大根炊きに友人と行ったとき、大釜で 炊かれた大根を一つもらって境内で食べていると、近所のお姉さん たちがお寺の中でお膳を食べていました。少しお金を払ったらあり つけるお膳であったのかと思いますが、それがものすごくおいしそ うに見えて、家に帰ってから「来年こそはお膳で食べたい」と駄々 をこねたものでした。そういえば、それ以来行ってないです。

●「京のわらべうた」全5曲の歌詞はこちら

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