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歌と語りのためのシアターピース「戻り橋」

16−06 2016.11.03

京都にゆかりのある3人の新進気鋭の作曲家の競作である『若手作曲家による新作工房プロジェクト 「トリコロール」』で、増田真結さんの新曲「歌と語りのためのシアターピース〜戻り橋」を初演 (葡萄の樹/みやこキッズ)いたしました。
初演とは言え、実は時間の関係で一部抜粋初演ということになりますが、語りと十七弦と合唱 (児童合唱、混声合唱、アルトソロ、バリトンソロ)という組み合わせが大変ユニークで私(たち) にとっても貴重な体験となりました。

オリジナルのテキストは私が書き下ろしたのですが(だからそれがやはり少し長かった)、 増田さんとは1年前にもご一緒しており、テキストはきっとお好きだろうと思った京都の 土地に縁(ゆかり)の伝説を題材にして、私なりに膨らませたものでもあります。
「戻り橋」とは、現在の私の自宅の近辺に実際にある橋(今はつけ変わっている)です。
平安時代以来様々な伝説があるのですが、「戻る」という言葉に私たちの人生や生きてい る時間と関わる最大のメタファーが潜んでいるように思います。
大昔は百鬼夜行の通り道、戦時には必ず戻って来てくれるという思いを込めこの橋から 兵隊を送り出したという話もあります。

第1部 母を失った少年が鬼に懇願してひと度「母の亡霊」と再会する
第2部 生死の境を行き来する鬼について
第3部 息子を戦地に送り出した母が年老いて命と引き換えにひと度「息子の亡霊」と再会する

というふうに構成しました。 ちょうど1部と3部を倒置させているわけです。大げさかもしれませんが、私たちは、 日常の生活の中においても少なからず目に見えない「霊的なものや思いのようなもの」 とともに生きているようにも思うのです。
「アルティ声楽アンサンブル」で演出を付けずに若干の抜粋演奏を行い、今回は演出を つけて2部と3部の抜粋ということになりましたが、いつか全編演奏をしたいと思っています。

P.s
演奏前には陰陽師で著名な清明神社(一条戻り橋のたもと)に演奏の成功祈願をいたしました。
3部は、松下耕先生に書いていただいた「うたおり」の「戦場」に符号していると思っています。

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