パン屋さんの匂いでしょ(葡萄の樹演奏版)

焼き立てのパン
いい匂いのするパン
甘いパン
ふっくらしたパン
雪のように白いパン
雲の形のような食パン
大きなメロンパン
きつねいろのクリームパン

皆さんはパンが好きですか?
わたしは好きですよ
特に焼き立てがね

ある小さな街
教会のそば、石畳の角にパン屋さんがありました
この通りに来るといつも焼き立ての匂いがします
街のパン屋さんにはパンの大好きなお客さんがやってくるようです

♪カランカラン
男声全員「いらっしゃいませ」
女声1 「おはようございます、クロワッサン、くださいな」
男声全員「はい、まいどありがとうございます」

1)クロワッサンのある朝食

朝の呼び鈴が鳴る
風に鳴る自転車のベルのように
食卓を音楽が彩る
目を覚まそう
新しい未来の1ページ

夢の中からもぎ取った
三日月のパンが待っている
クロワッサンは微笑み作る朝の歌声

朝の香りが広がる
風に乗る春の野花のように
食卓を匂いが彩る
窓を開けよう
新しい光が差し込むように

白いお皿に焼きたての
クロワッサンが待っている
クロワッサンは会話を弾ます食卓の花束

♪カランカラン
男声全員「いらっしゃいませ」
女声2 「こんにちは、サンドイッチにする食パン、くださいな」
女声3 「いろんなものを挟んで外で食べるのは最高でしょ」
女声全員「作る楽しみ」
女声全員「食べる楽しみ」
女声4 「サンドイッチは誰でも楽しめるから」
男声1 「うちの美味しい食パンさえあれば、野菜に果物、卵にハム、何を挟んでもとっても美味しいですよ!」

みなさんは知ってました?
サンドイッチってサンドイッチ侯爵の発明品だって
カードゲーム好きなサンドイッチ侯爵はゲームをしながら片手で食事が出来るようにサンドイッチを作ったという話しがありますよ
確かに片手でパクリも出来ますねし、ピクニックにも持って行きやすいですよね

2)なんでもサンドイッチ

楽しいな
サンドイッチだと
広い野原に寝ころんで
雲を眺めながら
サンドイッチを食べたいな
心躍るんだよ
サンドイッチ食べるとき

色とりどりの野菜と果物
何でもサンドしてみたい
大きな口でかぶりつきたい

嬉しいな
サンドイッチだと
食パンをテーブルに並べて
庭の光を眺めながら
サンドイッチを作りたいな
心弾むんだよ
サンドイッチ作るとき

ハムや卵やチーズやサラダ
何でもサンドしてみよう
たくさんサンドしてみよう

♪カランカラン
男声全員「いらっしゃいませ」
女声5 「おじさん、アンパンください」
男声2 「はい、アンパンね」
女声6 「いや、クリームパンにする」
男声2 「クリームパン?」
女声7 「やっぱり、メロンパン」
男声2 「メロンパン?」
女声8 「どうしよう…」
男声2 「なんなら、新作デニッシュもあるけど?」
女声9 「やっぱり、アンパンひとつ」

3)あんパン食べよう

ブランコ漕ぎながら
あの子のこと考えてたら
急にパンが食べたくなったんだ
ああ、喧嘩をしてもお腹は空くんだね
あんパン食べよう
家に帰ったら
ああ、お腹がなってるよ
ふくろ破れば良い香り
大きな口でほおばると
待ってた通りの味がする
少し喉が渇くけど
小腹はこれで満足するのさ

ブランコ漕ぎながら
あの子のこと考えてたら
急にパンが食べたくなったんだ
ああ、喧嘩をしてもお腹は空くんだね
あんパン食べよう
家に帰ったら
ああ、お腹がなってるよ
きつねいろのまる顔に
こし餡にはひなげしの実
粒あんには黒いゴマ
ときに桜もほんのり香る
お腹の虫が待ってるよ

ああ、あんパン食べたい

♪カランカラン
男声全員「いらっしゃいませ」
女声10「パン屋のおじさん、パンはいつからあるの?」
男声3 「え、パンはいつからあるって?」
女声11「江戸時代?原始時代?」
男声4 「そうだね、実は、世界的にみるととっても古いんだよ」
男声5 「少なくともピラミッドを作った時期にはもうパンがあったらしいのでね」
女声12「へえ、そんなに古いの」
男声6「そうだよ。ピラミッドを作っていた人たちは、仕事が終わったらパンとビールを配られていたっていう記録があるんだよ」

そうなんですよ
小麦から出来るのでね。
世界中どこでも、いろんな形でパンのようなものが食べられていたそうですよ。
今から8000年〜6000年ほど前、古代メソポタミアでは、小麦粉を水でこね、焼いただけのものを食べていました。これがパンの原形。古代エジプトでは「発酵パン」が誕生し、食物として、供え物としても作られるようになりました。
古代ローマ時代には製パン技術を身につけた専門のパン職人が登場して、いよいよパンは量産されるようになり、その後ヨーロッパからアジア、アフリカへも伝えられ、世界各地で主食として取り入れられるようになりました。
パンに纏わることわざを紹介しましょう。

女声13「イタリア 歯の丈夫なものにはパンはなく、パンのある者には歯がない」
この世はままならない、ということですかね

女声14「ドイツ よそのパンはおいしい」
「隣の芝は青い」と似ている意味

女声15「イギリス 鳥のさえずりよりパン」
これは「花より団子」でしょうね

女声16「スペイン パンのない日は長い日だ。」
待ち遠しく、パンがそれほどに大切なものだということ

4)パンはいつから~エジプトパン

昔々のそのまた昔
ピラミッドを作っていたエジプトの人たちは
ビールとパンを食べていた
大きな石を運んだご褒美に
小麦で作ったパンを
食べてたんだって

それからかれこれ数千年
僕らはパンを食べている
歴史はパンで回っている
僕らはパンで学んでる


昔々のそのまた昔
ラクダで旅したアラビアの人たちは
ひき肉とパンを食べていた
ラクダと日陰で休みながらね
小麦で作ったパンを
食べてたんだって

それからかれこれ数千年
僕らはパンを食べている
地球はパンで回っている
僕らはパンの旅をする

昔々のそのまた昔
伊達で陽気なイタリア人は
パンとチーズをを食べていた
ワインを飲みながら
小麦で作ったパンを
食べてたんだって

それからかれこれ数千年
僕らはパンを食べている
日々はパンで回っている
僕らはパンで夢をみる

女声17「それで、おじさんはどうしてパン屋さんになったの?」
男声7 「パンが好きだったからね」
女声18「それだけじゃないでしょ」
男声7 「そうだね。実はおじさんはね、ある人にどうしても焼きたてのパンを食べてもらいたくってね」

今から随分ふるい昔
でも江戸時代とかではないときですよ
戦前の話です
敬虔なクリスチャンの夫婦がおりました。
二人はずっと子どもが欲しいなと思っていたのですが、なかなか授かりませんでした
もともと材木屋をしていたのですが、不幸にして火災があり燃えてしまいました
二人とも命を取り留めたことだけでも感謝しましたが、生活には困りました
その後、務めた会社も倒産し、残念ながら働き口を失ってしまいました


自分たちの残りの人生せめて人の役に立って生きていきたいと願っていました
教会でお祈りを捧げてから
帰ろうとするときにふとパンの匂いがしてきたのです

「そうだ、パン屋をやろう」

二人は、パン屋をすることに決めました
そして試行錯誤で勉強を重ねて、
美味しいパンを作ることが出来たのです
お金を工面して教会のそばに小さなパン屋さんを作りました

♪カランカラン
おや、またお客さんですね。
男声全員「いらっしゃいませ」
女声19「おじさん!パンはどうやって作るの?なんか菌を入れるって聞いたけど」
男声8 「それはイースト菌だね」
女声20「発酵させるの?」
男声9 「そうだよ、よく知ってるね。パンを作るのになくてはならないものは 小麦粉、イースト、塩、水 の4つ。 これに味と風味を良くするために、砂糖、油脂、乳製品なんかを加えるんだよ。イースト菌というのは微生物」

そうです。地球上には沢山の目に見えない微生物がすんでいます。パンをふくらませる働きをするイースト菌もそのひとつです。イースト菌が活躍すると発酵によって生地に閉じ込められたガスが生まれ、生地をふくらませます。イースト菌が増えれば増えるほどガスが出てふくらむのですよ。

5)菌は菌でもイースト菌

パンはどうして出来るのかな
どんなふうに作るのかな?
目立たぬヒーローしってるかい?
イースト菌を知ってるかい

なくてはならないイースト菌
菌は菌でもばい菌なんかじゃないんだよ
自分は主役にならなくても
誰かと誰かを結び付け
ぐっと変身させるんだ

こんなに役に立つなんて思わなかった
魔法のように
あの子の心を膨らませられるんだ

パンはどうして出来るのかな
どんなふうに作るのかな?
目立たぬヒーロー知ってるかい?
イースト菌を知ってるかい

なくてはならないイースト菌
菌は菌でもばい菌なんかじゃないんだよ
一人でいても無力だけれど
誰かのことをじっと見つめ
ぐっと変身させるんだ

こんなに役に立つなんて思わなかった
魔法のように
あの子の頬を明るく出来るんだ

教会のそばでパン屋を開いた二人は、パンを焼き人に食べてもらうことで自分たちの人生の役割を感じていました
一つ一つ丁寧に焼き上げるのがパン屋の心意気
近所でも評判の店となりました

しかし、いつしか戦争がはじまり、ご主人が戦争に取られ、パンの材料も手に入りにくくなり、一時店を畳まざるを得なくなりました
戦後になってご主人は何とか戻ってきたのですが、戦地での無理がたたって病気がちな生活が続きました。
それでもしばらくは夫婦で助け合いながらパン屋を続けていたのでしたが、思うように生活が出来なくなり、田舎に戻ることにしました。

パン屋妻「神様、お許しください、私たちに天職を授けてくださったのに」
パン屋夫「最後まで全うすることが出来ませんでした。パン屋を畳むことをお許しください」

老夫婦は祈りました。

そろそろ店を畳もうとしたある日
貧しい身なりをした母と子がパン屋を訪れました
親子はお金がなかったので並んだパンを見ているだけでしたが、
その様子を見ていたパン屋の夫婦は焼き立てのパンを2つ親子に差し出したのでした

パン屋妻「どうせこの店もうすぐ畳むのでね、焼き立てのパンは美味しいよ」
パン屋夫「美味しいものを食べると元気が出るよ」

夫婦は言い、お母さんは深く感謝しました
そして男の子は本当にこの焼き立てのパンの香りが忘れられませんでした。
男の子はいつかパン屋になるんだと心に誓いました

♪カランカラン
おや、またお客さんですね

男声全員「いらっしゃいませ」
男声10「おじさんイートインできるかな?」
男声11「クロックムッシュを食べたくて!」

伝統的なクロックムッシュはフライパンにバターをひいて、パンをトーストし、そこにベシャメルソースなどを塗ります。レシピにはいろんなバリエーションがありますが、ハムとチーズを使うものが一般的ですね。言葉の意味は「かりっとした紳士」、一説では食べるときに音がして上品ではないので男性専用とされたそうですね。でも、今はだれでもクロックムッシュ!

6)クロックムッシュ!

トゥルットゥットゥットゥットゥールンルルンルル
日曜日だって
心が晴れなきゃつまらない
心が晴れれば仕事だって楽しめる

トゥルットゥットゥットゥットゥールンルルンルル
晴れた日だって
一人でいるのはつまらない
二人ですごせりゃ雨の日だって楽しめる

クロックムッシュは
リッチな時間
子どもには早い大人の時間ってあるものさ
でもカリカリしちゃいけないな
せっかくの時間
ゆっくり楽しまなくてはね

クロックムッシュは
特別な時間
一人で優雅に過ごしたい時間ってあるものさ
でもカリカリしちゃいけないな
すきっ腹じゃ始まらない
まずは腹ごしらえ

トゥルットゥットゥットゥットゥールンルルンルル
お金があっても
希望がなけりゃ意味がない
希望があれば財布は空でも楽しめる

楽しもうぜ
人生を
Smile and some Money
そして毎日パンがありゃー
それで十分
世界は楽しめるのさ

かつての男の子は長い修行を経て立派なパン屋さんになり
あの街の教会のそばにパン屋を構えたのでした

そしてパン屋さんは昔パンをくれたご夫婦を探し当て、
一度パンを食べに来てくださいと招待状を出しました
どうしても焼き立てのパンを食べてもらいたいと思っていたのです

老夫婦から手紙がきました。
「ありがとうございます。
でも私たちはもうすっかり年を取って足も目も不自由で、あまり遠出をすることが出来ないんです
どうぞ美味しいパンを作り続けてください
私たちには子どもがなく、神様のご縁で、あなたが受け継いでくれたように思っています」

パン屋さんはそれでも毎年招待状を送っていました
そして、たったの一度、年をとった老夫婦がパン屋を訪れてくれたのでした
ある年の5月の晴れた午後でした
老夫婦は連れ添って懐かしい街を歩きました。

女声「教会の鐘の音」
男声「空を映すステンドグラス」
女声「いっせいにハトが飛び立っていく」
女声「きれいにお掃除された道」
男声「敷き詰められた石畳」
女声「行きかう人たちの笑顔」


見慣れた花屋を通り過ぎ、見慣れないレストランを通りすぎ
角を曲がると美味しい焼き立てのパンの匂いがしました

パン屋夫「おじいさん、良かったね、パン屋の匂いがするよ」
パン屋妻「おばあさん、良かったね、なんて良い匂いがするんだろう、懐かしいねえ」

老夫婦はパン屋の扉を開けました。
良い匂いと懐かしい気持ちと温かい空気に包まれて

7)パン屋さんの匂いでしょ

それは春風に乗ってやってくる
甘くて軽くて香ばしい
蕾がほどけるときのような
嬉しい匂い
パン屋さんの匂いでしょ

それは朝の音に紛れてやってくる
ほんのりしっとり香ばしい
扉開くときのような
嬉しい匂い
パン屋さんの匂いでしょ

思い出はパン屋さんの匂いとともに蘇る
夢はパンのように膨らんでくる

あったよね
自転車漕いで坂を上がったところに
パン屋さんがあったよね
あったよね
手を繋いだ帰り道角を曲がったところに
パン屋さんがあったよね

私と何かを繋ぐもの
それは例えば

パン屋さんの匂いでしょ?
パン屋さんの匂いでしょ

当たり前すぎて忘れていたのだけど
掛け替えのない日常の時間

いい匂いにいい思い出が蘇ります
思い出が心を温めます

老夫婦は何度も何度もパン屋さんの手を握りしめていました

女声全員「ありがとう」

今日もテーブルにきつね色のパンがあることに

男声全員「ありがとう」

あなたに
パンに
パンを作った人に
小麦を育てた人に
私を私にさせてくれた人に
全ての感謝の対象として目の前にパンがあることに
微笑みを忘れてはいけないね
カーテンを開けて
朝日をテーブルに
今日も
美味しいパンをいただきます


♪カランカランカランカラン

アンコール) パンのマーチ

パン パン
パパン パンパン パ(パンパカパンパンパーン)
パンパンパンパン

あんパン、ジャムパン、カレーパン
クリームパンにコッペパン

大きなまるいメロンパン
お日様になって昇っていく

食パン一斤家になれ!
パン粉はみんな雪になれ!
僕らはいつも大きな笑顔で
パンを食べる
パンパンパパンとパン食べる

たまごサンドにカツサンド
フルーツサンドにクロワッサン

ホロホロ崩れるデニッシュパンは
木の葉になって風を舞う

テーブルロールは雲になれ!
フランスパンは船になれ!
僕らはいつも大きな笑顔で
パンを食べる
パンパンパパンとパン食べる





作曲:山下祐加  2018