プンクトゥム(突き刺すこと、突き刺されること)

1)
明るい部屋の片隅で
私はあなたを思う
人は人の中で葬られ
人の中で蘇る
人は人の中で生きている

あなたは何度も私に教えてくれている
あなたにはそのつもりはなかっただろうが
私が繰り返しあなたを思うことで
私はそのことに気づいている

人はあるときからすでに失われている
いや失われ始める
砂時計を零れ落ちる砂粒のように
時間だけが止めようもなく消費されていく
人は崩れていく
人は人から遠ざかっていく
人は人の中で蘇らない限り
永遠の波の反復の中に紛れて消えてしまうのだ


2)
写真は
失われていく瞬間を捉えようとするものだ
人は「それはかつてあった」ことをどこかに刻印したくて
失われていく瞬間を留めようとする

失われたものとの間にブリッジを作るために
蘇らせるものとの距離を確認するために
あるいはその蘇りの小さな切っ掛けとして
人は写真を撮る
写真を見る
アルバムを捲る

しかし何を映すのか?
緩やかな輪郭を?
何かと錯覚しそうなそのフォルムを?
柱や机の片隅の落書きのようにして
不確かなイメージに耐え切れずに刻印するのだろうか?
写真に写されたものを真実と信じ

人は写真を撮りそれを見ることで心のどこかを痛めている
そのことにあまり気づくこともなく

例えば真珠を作るためにあこや貝を傷つけるような仕組みで
樹液を集めるためにメイプルの樹を傷つけるような方法で
修復する力を引き出すために人は心のどこかを傷つける

その傷が写真なのだろうか
その喪失と回帰の反復が
写真の役割なのだろうか

人は傷つき傷つけ
そこから湧き出てくる気持ちで
時間の橋を架けるのだろうか


3)
明るい部屋の片隅で
私はあなたを思う

映画を見るように
音楽に情感を
身振りに物語りを
言葉には世界を感じながら

映画は小さな光だから
明るい部屋の片隅で
映画を見るようにして私はあなたとの失われた時間を埋めてみる

心のどこかに小さな傷を作りながら
その傷を修復するように現れる膏薬で自らの傷を癒しながら
あなたの時間と私の時間を混ぜ合わせ
あなたと私の間に橋を架ける
手を合わせるように心を重ね合わせ
あなたのことを思う

あなたの閉じた瞳
あなたの声
あなたの眼差し
あなたの言葉
あなたの後姿
あなたが駆け寄る姿

全てが愛おしい
全てが寂しい

心から溢れた樹液は
あなたと私の距離をその香りで埋めてくれているのだろうか

人は人の中で生き
人は人の中で蘇るのだから
私があなたを大切に思うことで
あなたは繰り返し生きることになるのだから

明るい部屋の片隅で
私はあなたを思う
繰り返し繰り返しアルバムを捲るようにして
心のどこかに小さな傷を作りながらも

私はあなたを思う


2010.12.13