リンデンバウムの木陰~シューベルトに捧ぐ

1.
風にそよぐ若き葉よ
菩提樹の木陰
辿り着きし旅人の
胸にも巡る
ふり仰げば遠き日の
母の歌声
優しき手招きのごとく
過ぎし日の小路(こみち)に
柔らかに響く


2.
風に香る初夏の花
菩提樹の木陰
夢破れし旅人の
胸にも訪れ
目を瞑れば遠き日の
頬染めし恋人
眠りの髪にも薫る
ひそやかな想い出
夢のごとく漂う


<日本語の訳詞>

そよぎ奏でつ 菩提樹の葉よ
憩い微睡(まどろ)みて 耳をすませば
優しその言葉  恋の瞳
愛しき思いに  溢れしわが胸

旅立つ夜に  菩提樹の枝
渦巻く風に  震え戦ぎぬ
去りゆく我を 留(とど)めるごと
我に語りぬ  懐かし思い出

されども我は 振り返らず
故郷(ふるさと)去りぬ  思い残し

瞼に浮かぶ  菩提樹の花
風に香りて  頬を照らしぬ
遥か時経立つ 思い出の地
夢に残るは 麗し姿
懐かし リンデンバウム


2017.12
作詞:ミュラー 作曲:シューベルト 編曲:千原英喜  2017