三月

三月の風が寂しさを運ぶ
夕暮の時間
影を見つめながら帰り道の時間を引き延ばしあう恋人たちに
何かの予感が
ためらいと同時に過(よ)ぎる

三月の光が微笑みを運ぶ
少し温かい昼下がりの時間
卒業式に向かっていく教室の中に
交錯しあう幾多の時間の集積が
窓辺に溜まった光が
互いを許し合うようにして固まっていた何かを溶かしていく


2011.5.16