縁側に差す冬陽の中で母が歌っていた
遥か遠い昔
庭の向こうに視線を投げ
少女時代の光を追いかけるように
座布団に座り身体を曲げながら
私は
刺繍の入った鞠を持ったまま母を見つめ
このまま時間が止まってしまうのではないかと怖くなった
母が今にも死んでしまうような気がしたのだ
やがて振り返って私を見つめる母
その瞳に涙が溜まっていた
私は駆け寄り
母の胸に飛び込んだ
母は膝に私を抱いて歌を続けた
あの歌は何だったろう?
母の声か
それとも幼い日の幻なのか
果てしない時間の彼方から
ときどき私の胸に蘇ってくる声…
若い日の美しくはかない母の姿とともに…
2010.12.13