夏の宵

夕立あがり
宵の風
笛の音遠く
酸漿(ほおづき)揺れる夏祭

浴衣の裾を押さえながら
二人で駆けた川沿いの道

露天で買った紙風船

振り返ったのが私だったのかしら
立ち止まったのが私だったのかしら

火薬の匂いに戸惑いながら
あなたの吐息に近づいた

あの日の花火は遠かったのかしら
近かったのかしら

銀色滲む夜空を見上げ
この瞬間を忘れないと思ったあの夜

私は泣いたふりをしたのかしら
怒ったふりをしたのかしら

胸のふるえを隠して
頬染めた
十六歳の夏


2011.5.16