夏よ
お前は時間を彼方へと押しやる
引き潮のように
水平線の彼方のきらめきに
貝殻のかけらだけを残し
それらは裸の身体を傷つけさえするのに
その残骸物の中で
人は永遠の潮騒に耳を傾けるしかないのに
緩やかな丘陵
そそり立つ断崖
海を渡る鳥は翼を動かすこともなく漂っている
夏よ
この怠惰にも情熱的にも見える風景の中にお前が隠しているものは
私たちが一度きりしか手に入れることの出来ない時間
二度と戻ってくることはないあの時間のことだ
それを何と呼ぼう
死と生のはざまの
ひたすらに反復する
波のきらめきを
いつも遠ざかっていくしかないあの瞬間のことを
夏よ
私は眠るだろう
時間を永遠にするために
お前の日差しの中で
諦めの眩さに身を委ねながら
2010.12.13