やがて柔らかい気配の中で
夕焼けは諦めたように滅び
夜は群青色の気高さを残しながら
空を支配する

緩やかな時間の中で
薄白い星がまたたき
歪んでいく景色の狭間から
灯りがともり始める

夜は慌てず
夜は余計な情を持たず
ゆっくりとその使命を進める

夜汽車の音
街灯に群がる羽をもった虫たち
深い静けさに埋もれていく町
決して後戻りしない時間

永遠に変わらぬ身振りの中で
夜は暗闇に力を与え
光は消え去り
声は途切れる

世界は夢の広がりの後ろに隠し込まれる
そしてひっそり気配もなく眠りこむのだ

夜は
いつしか満足げにその使命を終える
ただ一人の少年が目を開いていることを知らずに

いや、知っているのにそんなことは自分とは関係ないというふりをして


2009.9.22