天使、瞳をとじる

微笑みは、流れ星のように
微笑みは、一筋の涙とともに
微笑みは、悲しみのパレットの中に
微笑みは、緑の葉のしなやかさで
微笑みは、薔薇の蕾の夢のように
微笑みは、六月の空気の手触りで
微笑みは、風に靡く長い髪の中に

天使は静かに瞳を閉じている
(言葉は要らないから)
天使は口元に笑みを浮かべ
人の手に触れている

永遠と一瞬のあいだ
ずっとずっと長い時間

樹液が大地と空を一巡りするあいだ
船が水平線の向こうに見えなくなるありだ
地球がスピードを落として回転する音を聞きながら

天使はやがて
かつて人だったものとともに
かつてやさしさとさびしさのあいだを彷徨っていた魂とともに
微笑みとなって
棚引く雲に近づいていくのだ

ある晴れた六月のことだった
天使は旅立った
「さようなら」
と、手を振りながら


2010.12.13