1
天使は少年の姿をしている
さびしさとやさしさは蝶番のように
人の気持ちの扉を開け閉めしている
さびしさはやさしさを忘れられず
やさしさはさびしさという陰りからしか生まれない
さびしさの中にやさしさは膏薬のように刷り込まれ
やさしさがあるからやがて寂しさが訪れる
天使はその両方の中に潜んでいるのだ
両方の気持ちを二つの指のように絡ませながら
両方の気持ちを翼のように羽ばたかせながら
二つの気持ちを行き来する
2
天使は二つのドロップを持っている
さびしさのドロップと
やさしさのドロップ
天使はドロップが好きだ
さびしさには微笑みを
やさしさには涙を
少し混ぜ合わせ
天使はカラフルなドロップを雲の隙間からばら撒いている
線路を走っていく少年に
膝に怪我をしながら夕日を見つめる少年に
布団の中で一筋の涙を流す少年に
やさしさとさびしさは強い抒情のゆらぎになって
やわらかい春の蓮華畑ように
雨上がりの紫陽花の薄い色彩のように
はかない秋の雲のたなびきのように
明るい冬の陽だまりのように
失われていく夏の終わりの光のように
…次第に緩んでいく
ドロップを舐めた少年の僅かな微笑みになって
2010.12.13