戻り橋の壱の段(歌詞使用)

●合唱(交互唱)

<男声合唱>
雷雲なれば心は騒ぐ
百鬼夜行の賑わいに
三途の靄(もや)も晴れ渡り
戻り橋の錠(じょう)も開(あ)く

<女声合唱>
水煙(すいえん)の彼方に夢霞む
蛍追いたる子の願い
鬼灯(ほおずき)吹きたる子の願い
黄泉(よみ)の母と出会うこと

<男声合唱>
この世もあの世も夢うつつ
合わせ鏡の片割れ探し
河原の石を眺むれば
世にも妙なる笛の音(ね)聞こゆ

<女声合唱>
それは雨が鎮むるとき
雨上がりに見仰ぐと
思いは広がり霞となりて
空は淡い朱に染まる

<男声合唱>
この世とあの世は川向い
肉は朽ちても思いは消えず
願う心に命は蘇(かえ)る
ただひとたびの微睡(まどろみ)の中で

<女声合唱>
人は願う
もう一度会いたいと
人は祈る
もう一度語りたいと
振り返りたる黄昏に
幻追いたるあの日のように

<男声合唱>
うたたねする間の雨上がり
黄昏どきの靄(もや)の中
現(うつつ)にかえりし母親の
童(わらし)を抱き、髪を撫で

<混声合唱>
ただひとつの言葉を残し
橋の向こうへと消え去った

再び母は修験(しゅげん)の旅へ

戻り橋の言い伝え
戻り橋の言い伝え
鬼灯笛(ほおずきぶえ)の音(ね)の中に


●児童合唱1
<ほおずきはぜて>

鬼灯(ほおずき)爆(は)ぜて
流れ星
行方も知れぬ
川の水

蛍追々(おいおい)
宵川原(よいがわら)
提灯(ちょうちん)ともして
戻り橋

夢に閉じるは
蝶の羽
夜明けに開くは
蓮の花

雨がやんだら蝉の声
日差し傾けば鈴の音
葦(よし)ず畳んで旅支度


●児童合唱2
<念仏唱えて>

念仏唱えて踊りなば
三途の鬼も惑うなり
経帷子も花と舞い
夢や現世(うつせ)の水鏡

―遠方より子どもたちの声が聞こえてくる(弐の段へと渡す)




作曲:増田真結  2018