あなたに書いた手紙だけれど
何度も直して出さないままでした
机の中にしまって
長い間、眠っていたようです

もうとっくに忘れたはずなのに
雪の夜の部屋のぬくもりの中で
小さな思い出が広がる
文字を辿る私の指がいつしかあなたの指と絡んでいる
手紙を辿りながら指先が小刻みに震える

私は立ち上がり
指で頬に触れる
このぬくもりは現実なのかかりそめなのか

窓の向こうには雪が降りしきり
その中に私の顔だけがまぎれる
曇った窓ガラスを指でふいてみる
この冷たさは本物なのか

窓から見える雪
ストーブにかけた薬缶は湯気を吐いている
蒸気の向こうにあなたの顔がかすんで見えて
時間だけが静かに立ち込める

曇りを拭った私の指は何かを求めてさ迷ったけど
あなたの頬を探り当てることも
自分のもとに帰ってくることもなく
時だけを重ねて
曲がったままなだ

仕方ないけど、とでも言いたげに
少し寂しげに


2010.12.13