鏡の中の歌姫は今日も悲しいリートを歌う
細いギタアのつまびきの
吐息のようなはかなさに
とぎれとぎれの涙を流し
寂しい窓辺に腰掛ける
ラベンダーの花飾り
遠い月影
星の砂
歌姫の歌は
ふるい歌
誰もが忘れた古い歌
鏡の中の歌姫の黒い髪には金の櫛
うなじを白く光らせながら
窓辺の椅子に膝を立て
細い手首を振り下ろす
細いギタアの爪弾きに
街の眠りが深まると
瞳を閉じて歌をやめ
こぼれた涙を指で拭く
鏡の中の歌姫は今日も悲しいリートを歌う
星空崩れ
窓の底
指先妖しく
夢の中
黄色い月夜の歌声は夜の帳に消えていく
2011.5.16