私からの手紙

竜ヶ崎混声合唱団へ

演奏会の盛会おめでとうございます。
伝統ある竜ケ崎混声合唱団の記念の演奏会で拙作の歌詞を歌っていただけることは嬉しくも恥かしくもありますが、幸いにして作曲の石若雅哉さんの力によって素晴らしい曲に仕上げられており、今回みなさんの力いっぱいの演奏を聴かせていただくことが出来ず残念でなりません。本日は遥か京都の地より皆さんの演奏の成功をお祈りしています

10年ほど前から突然に詩を書くようになりました。
しかしながら、いろいろと記憶を辿ってみると、実は私の父親は趣味で短歌(でも歌集を2冊出している)をやっており、幼い頃からお風呂で万葉集や斉藤茂吉の歌を暗唱させられたり島崎藤村や佐藤春夫の詩を反復させられたりしたことがありました。その韻律のようなものが潜在的な地下水脈として私の中にはあったのかもしれません。また恐らくそのような影響もあり、私にとっては合唱より先に文学に傾倒する青春の歩みがありました。しかし、ともすれば一人孤独になりがちな私の心の扉を開いてくれたのが、大学時代に出会った合唱なのでした。
合唱は一人では出来ず、そこでのひたむきな活動は必ず仲間に支えられていることを実感します。私の人生は合唱に救われたとも言えるのでしょう。そして、合唱指揮者としての今の活動はまさしくそのことを強く実感する活動だとも言えるのです。ふとしたきっかけから時折ふと思い出して紡ぐ私の言葉は、「曲がなければ」ノートの中にに閉じられたままでしょう。そして音楽もまた「演奏する人があって」ようやく聞き手の胸に届くものでしょう。合唱団の皆さんから溢れる歌声が世界に広がっていくことを想像しています。歌が皆さんの励みとなり、皆さんの歌声がまた客席と聞き手の励ましとなりますように。

2016.9.11