紫陽花の花

雨の日の朝
色づき始めた紫陽花を見ながら
私はピアノを弾いていた
あれはいつの日だったろう
葉脈を這う蝸牛を
私がいつまでも眺めていた日

雨の日の午後
抱えきれないほどの紫陽花を買って
私は家を出た
あれはいつのことだったろう
私がようやく大人になって
自分の人生を歩み出したとき

紫陽花は
雨に煙る私の人生
紫陽花は
夢に開く私の憧れ
時に移ろい
流れる涙に寄り添ってくれる花

雨の日の夕暮れ
私は紫陽花を眺める
薄い光の中で

降りしきる雨に花びらが洗われるように
涙は心を磨いてくれだろう
そしていつか雨はやむだろう

そのとき私はまた新しい私に出会うのだ

紫陽花の花が
そう語っている
語ってくれている

いつものように



作曲:北川 昇 「あじさい」