キャロルの好きなフクロウ

いつかどこかのクリスマス
森のふくろうの親子が沈む夕日を見ながら話をしていました。
「父さん、そろそろだね」
「ああ、そうかな」
「夕暮れの雲の形がさあ、…きっと雪になるよね」
「そうだな、雪になるな、そしてぐっと冷えるな」
夕暮れが訪れ、森の鳥たちは町から帰ってきました。
口々に街の様子を話しています。
街一番の広場の大木に明かりがともっていたこと、光の環がたくさん出来ていたこと。
ジンジャーの香りのするクッキーが焼かれていたこと、チョコレートのプディングが運ばれていたこと。きれいな包みのキャラメルが配られていたこと。
そしてたくさんの歌が歌われていたこと。
鳥たちは覚えたての歌を歌っていました。

「いいなあ、僕も町にいきたいなあ」
「よしなさい、町は危ないよからね」

クランベリー色だった空はやがて深い群青のような色になり、次第に夜が訪れました。
 「父さんそろそろだよね、星がめぐってきたからね」
「そうだねえ、そろそろだろうねえ」
「ほら、月の光が冴えわたってる。空気が冷えてきたんだよ」
「たしかに、もう少しで雪が降りそうだね」
「ほら、星の並びが変わってきたからね」
「ほほう、青い光の星がてっぺんにきたね」

ふくろうの親子は空を見ながら語り合いました。
「クリスマスって言うんでしょう」
「クリスマスって言うらしい」
「いいなあ、僕、大好きなんだ、素敵な音楽が聞こえてくるんだよ」
「街のほうからね、いつもこの時期に聞こえてくるよね」

月明りを雲が覆い、やがて雪がちらついてくると、森はゆっくり眠り始めました。
ふくろうの親子だけが目をさましています。
まるで森の番人のようにして。
すると、静まり返った森にも町の賑わいが伝わります。少なくとも、耳を澄ましたこのふくろうの親子には聞こえてくるのでした。
「ぼく、この歌覚えたいんだ、いつもクリスマスの夜に聞こえてくる歌なんだ」
「そうだねえ、覚えておくれ」
「うん、夢の中でも歌えるようにね」
「ああ、歌っておくれ、小さな声でね」

森は静寂に支配され、ゆっくりと眠りにつきました。そして、ふくろうの親子だけが、凍った空気を通して街から伝わってくるクリスマスの歌を聴いているのでした。
やがてふくろうの子供は小さな声で歌を歌いました。
その歌声は、星の隠れた夜空にも、森にも、森に眠る木々たちにも、木々に眠る鳥たちの夢にも響き渡ります。
「ああ、いい歌だね、幸せというのはこういうことなのかな」
「いい歌でしょ」
「何だろう、この歌の中には、何というか…何かがあるねえ、上手く言えないが、何かの気持ちが」
「ああ、…それは願い、だねきっと」
「願いか、そうだなきっと」
「こんなふうになって欲しい、あんなふうであったらなあ、そういう気持ち」
「そうだね、それが願いだね」

夢見る森には、静かに歌が広がっていきました。安らかで、楽しく、願いに満ちた歌でした。そして、その向こうにはまだ誰も知らない新しい「時」が宿っているようなのでした。それは「明日」とでも言うものなのでしょうか。



夕暮れの太陽が傾くと
空はクランベリー色に染まりだす
そして、鮮やかな光の輪が
子どもたちを迎えてる
さあ、音楽が始まるよ
夢のようなクリスマスの音楽が
静かにゆっくり始まりだすよ ルラララ ルラララ
子どもたちが歌っている
森まで響く声で トゥリリリ トゥリリリ
鳥たちも歌っている
町に広がるこの歌を

やがて歌を覚えた鳥たちは
翼広げて飛び立つよ
明日の町の広場へと
希望の種を運ぶため

もみの木に灯りがともると
大きなクリスマスツリーが出来上がる
そして、教会の鐘の音が
雪の石畳みに跳ね返る
さあ、音楽が始まるよ
心和むクリスマスの音楽が
明るく朗らかに始まりだすよ ルラララ ルラララ
子どもたちが歌ってる
空まで届く声で トゥラララ トゥラララ
星たちも歌ってる
願いのこもったこの歌を

やがて歌を覚えた梟は
静かに歌を歌いだす
子どもたちの夢の中
明るい光で満たすため




2023
作曲: 2023