かえる、雨上がり

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蛙は自分が何を待っているのかを知らなかった
もちろんそれが何であるかが分かればありがたい
誰かの帰りなのか
誰かの訪問なのか
これから事件が起こるのを待っているのか
自分に起こりうる何かを待っているのか
蛙には分からなかった
分かりたかった
でも、分からないことは仕方ない
人間でも分からないことは多いはずだ

蛙は自分が人間を意識しているのが分かった
しかし
この土の湿り気
葉に含んだ水分
水澄ましの足音
池を泳ぐ鯉の背びれの動かし方について
人間は知らない

だから宇宙からみれば、人間も蛙もそうかけ離れた存在ではないのだ
人間が得意な言語とて所詮概念化の遊具にすぎない
蛙はそう言い聞かせた