花好きの父は、小さな庭に小さな花壇を作っていました。仕事机にはどこで摘んできたのか時折り名も知らぬ野花が飾られていました。狭い家なのに部屋の中にはいくつもの鉢植えが置かれており、世話のし過ぎでよく枯らしてしまうので、鉢が増えるたびに家族は訝しく思ったものでした。
それでも、父が亡くなった後も、季節が巡ると花は健気に咲き続け、残された家族を励まし続けてくれていたように思います。
…どんなに冷たい冬の時期が来ても、時間が過ぎ地面が温まると、土の中の種は自然に芽を吹き、葉を茂らせ、蕾をつけます。
それを考えるとよく「歌」のことを思います。
私たちは、この間、思いもよらず長く厳しい時期を過ごすことになりました。しかし、長かったこの季節を耐えることで、私たちが歌を希求する力はより深く豊かに育まれているのではないでしょうか。
日差しに育てられ、雨水を貯え、風を凌ぎ、自分の役割を果たすかのように咲く花たちのように、私たちも諦めることなく歌を思い続けることが必要です。そして、そのことで必ず、自分の気持ちをしっかりと表した歌を歌えるように思うのです。
素敵な合唱団と、素晴らしい作曲家、指揮者、ピアニストのコラボレーションから、ここにまた大変美しい曲集が生まれました。たくさんの優しい色をした歌の花が咲き誇ることを願っています。