原曲は、ロベルト・シューマン(1810~1856)が「歌曲の年」といわれる1840年に作曲した連作歌曲です。原詩は、ドイツ・ロマン派の抒情詩人アーデルベルト・フォン・シャミッソー(1781~1838)の1830年の詩ですが、乙女時代の淡い恋心が実って結婚し子どもを授かり、そして若くして夫に先立たれた女の愛の一生を描いています。
このような曲はもちろん原語で歌うに越したことはないのですが、親しみのある入門編というテイストで行った拙訳(みなづきみのり)に対しては千原先生がエレガントでエンターテイメント性の高いアレンジを施し「合唱曲」にしてくださっています。シューマンは作曲にあたって原作にあった最後の詩「かけがえのない日々の夢も」をカットしていますが(…原曲では夫の死によって終わる)、本曲では、シューマンのピアノ曲にシャミッソーの残りの詩の翻訳を入れていくという形を取って原詩を生かしております。また曲間には、オリジナルのナレーションを入れており、トータルとして非常に物語性の高い立体的な構造に再創造されていると言えます。