野薔薇に

1)
野薔薇の
葉に触れる君の手に
銀色の皐月の雨が降りそよぐ

我が歌は
遥か心の彼方まで
過ぎ去りし日
恋う如(ごと)
しどけなく尋(と)め行く

どこか、どこの地か
君の佇む木のもとへ
あの日の髪を梳く風を追い
その下に仄かに残る薔薇の薫りに
君を思い
君を歌う

2)
何時までも
胸に残る君の声
ほの暗い夕べの光に溶けていく

我が夢は
青白い吐息と消え行き
薔薇の枝
手折(たお)りて
胸の扉閉じる

いつか、いつの日か
遠き空を振り仰ぎ
あの日の雲を送る風を追い
その袖にほのかに残る薔薇の薫りに
我が歌を思う
我が夢を思う


作曲:石若雅弥   「私からの手紙(メッセージ)」 2016