サーカス団は欺瞞と憎悪に満ちていた
玉乗りをするピエロも
曲馬団の女王も
綱渡りする恋人たちも
一輪車の少年も
団長は短銃を持ったまま足を引きずり
ラッパの音が鳴り響く
どよめきと盛大な歓声と拍手が起こる
しかし
みんな嘘だった
誰もが誰かを恨んでいて
誰もが誰かを騙していた
そして誰もがそのことには触れようとはしなかった
サーカスというもののバランスを絶妙に保つために
嘘が嘘を支えていた
興行が終わり
客が笑い声と薄い息を残して帰っていった
汚れた衣装と酒瓶が投げ捨てられた
団長はテントに凭れてパイプを燻らした
夜明けを待たずに全てが仕舞われ
次の旅が始まった
熊座の方角を目指して
サーカス団は旅立った
2010.12.1