アポロンの竪琴

音楽は海から生まれたのだろうか
波のように反復しながら心の傷口にすりこむ膏薬として…
悲しみの記憶を海の遠鳴りに変え
涙を貝殻に閉じ込めるために

音楽は空から生まれたのだろうか
風のように駆け抜けながら頬を撫でていく吐息として…
明日への望みを星のまたたきとして示し
夢を遥かな白雲の形にするために

しかし
耳をすますと聞こえてくるだろう
竪琴の音色が

街角で
教室の窓辺で
図書館の片隅で
校庭の樹のそばで

胸のときめきから音楽が始まる

音楽はあなたの歌声
あなたの言葉
あなたの叫び
あなたのつぶやき
あなたの物語の始まり

あなたは誰かのために歌うだろう


気づいてほしい
音楽はあなたからあなたの大切な誰かへと奏でられるものなのだということに
私たちが一人ではないことを確認するために…

想像してほしい
世界が音楽に満ちた日のことを
世界はときめきに溢れ人は人のために歌を歌っていることを
そして、あなたのうたを待っている人がいることを

耳をすませば
聞こえてくるだろう…

アポロンの竪琴に乗せて
今こそ私たちの歌が生まれるときなのだ


2009.9.22
作曲:千原英喜 女声合唱とピアノのための組曲「アポロンの竪琴」  2011
作曲:松本 望 混声合唱とピアノのための組曲「歌が生まれるとき」  2012